People's Story vol.3【鎌田健太郎さん @合同会社ヴァレイ】

itobanashiのあかりです。

 

itobanashiの服づくりに関わる “人” にフォーカスして、その背景を紹介する People’s Story。

 

第3回目はitobanashiのフロント刺繍シャツやシャツワンピースを縫製してくださっている合同会社ヴァレイ の職人、鎌田健太郎さんを紹介します。

 

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鎌田健太郎

合同会社ヴァレイ・縫製職人

"ものづくりでたくさんの笑顔をつくる"

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鳶職(とびしょく)、洋服のお直しの仕事を経て3年前に現代表である谷英希さんと共に合同会社ヴァレイをスタート。

”若い人にもっと縫製の魅力を知ってもらいたい” という想いを持ちながら縫製職人としてこだわりの衣服を作りつづける。

 

 

ファッション業界に転向後、”売る人”から”つくる人”へ

もともと洋服が好きで、昔埼玉で鳶職をやっていた時期も、よく渋谷や原宿に通ってましたね。そのあと大阪のアパレルブランドで販売員をしていた事もあったけど、好きじゃないものも売らないといけなかったりで何かモヤモヤする部分がずっとあって。

“洋服” が好きな人と関わるにはどうしたらいいんだろうと考えたときに、性別も年齢も関係なく服を大事に着続けたい人が多く来るのは洋服のお直しだろうと思って、「これやな」と思ったんです。それから縫製スクールに通って入社して…と進んでいきました。

でもそのあと、お直しでは分からない服づくりのはじめのステップに興味を持ち始めたんです。お直しは完成されている洋服を解くところから始まるので、イチから洋服を作りたいと思って。そしたら元々お直しで一緒に働いていた友人の転職先が谷((合)ヴァレイ・代表、以下省略)と繋がっていて、谷が会社設立に興味ある人を探してると知ったんです。当時はミシンも何もなくて小さいデスクだけでしたが、谷のビジョンに共感しここまで続けて来ました。

 

 

 

手縫いの刺繍が施された生地から垣間見る、人との関わりの大切さ

itobanashiの生地は、納期がずれ込んだり手刺繍の表情がそれぞれ少しずつ違っていたり、普通の大量生産でできるやり方ができないということもあり全体的に大変なのです。だけども、刺繍があることで生地単体のインパクトはすごいですよね。チカン刺繍なんかは裏も工夫されててきれいだなとか、切るのがもったいないなとか思いながら作業しています。うちのスタッフでも刺繍好きの人や以前生地屋で勤めていた人がいて、「かわいい」とか、残布や切れ端が出ると「ほしい」ってよく言ってます。

itobanashiのものづくりは、職人さんの給料のこととかにも気を配ってて、手仕事によって生活水準が保たれるのも良いですよね。伊達さんのエシカルな考え方にも共感しています。

手仕事の現場で働いていると感じることは、"ものをつくる" ということは "人が関わっている" ということで、それはインドの職人さんたちも同じように感じているんじゃないかなと思います。最近は若い世代だとシャツはロボットが作ってるんじゃないかと思っている人が多いんですよね。工場に実際に来て見てもらったときに、初めて "こんなに手間がかかっているんだ" と気づいてもらえることが結構あって。裁断は最近だと自動裁断機があるけど、ミシン、ボタンホールや最後の仕上げのプレス、梱包は人の手によるものです。ものづくりには人の手や人との関わりが欠かせないんです。

 

 

 

なかなか知られることのないファッションの裏側

自分たちの工場ではブランドさんから縫製を依頼されてから作るというスタイル (OEM) があるんですけど、縫製の仕事はどちらかというと焦点が当たらない裏側の部分なので、なかなか知ってもらえないところがあるんです。

洋服を一着買うときに、一度立ち止まって、誰が作ったのかやどうやってデザインされたのかを考える人が増えていけばいいなと思います。100% Made in Japanのデニムを作るとなったら、6,000円代でつくるのは難しくて、きっとどこかにしわ寄せがきてるはずです。でもそういうことは素材とか質も含めて、言われなければわからないことだろうし、20,000〜30,000円になれば、なんでだろう、何が違うんだろう、って考える。そうするとちゃんと作ろうとすればそれに見合う値段になることだったり、背景が全然違うことに気づいてもらえると思います。

OEM側の人達ももっと現場に来て、なんで時間がかかるのか、なんでこの値段なのかを見てもらえればいいなと思ってます。うちの金額は他と比べたら高いといわれるかもしれないけど、うちからしたら妥当で。ここから値段を下げるということはどこか他のどこかにしわ寄せがいくということになるので。

 


「洋服を作りたい」という人達の想いを形にしていきたい

洋服を作りたいけど作れないっていう人達を減らして、何か形にしていくお手伝いができたらいいなと思っています。若い人たちにもっと縫製の魅力を知ってもらいたいですね。なんとなく学んで卒業して、販売職に就くよりも。スポットライトが当たってないだけで縫製には思っている以上に魅力があると思うんです。

今、縫製職人の数って減ってきていて、服飾学校とかでもデザイン科、パターン科などあるけど、縫製技術に特化した学科はないんです。だから窓口がなくて。求人を出しているところは大量生産してる大きい工場が多いし、条件が合わなかったりしてはじめから目指そうとする人は少ないというのが現状だと思います。

今受けている依頼は、6割から7割くらいが東京のブランドなんですけど、縫製工場の人材って明らかに高齢化しているんです。やり取りが未だに電話やファックスなどで細かいやり取りがしづらい工場もあって。縫製の現場って思っているよりアナログなんです。こだわりが強いところは細かいやり取りが大切になるし、日本には高齢化のほかにも自然災害の問題もありますしね。

ものづくりは、何かを作ったり、直したりすることで誰かの笑顔を作ることができます。これからも誰かを笑顔に変えるための仕事であってほしいと思ってます。

 

 

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